先にも見た通り、看護師の離職率はおよそ10%と発表されていて、数字上ではそれほど高いようには思えません。しかし、これは全体の平均なので全国どこへ行っても離職率がその程度というわけではありません。地方では看護師が働く職場も限られていることから離職率はどうしても上がりにくい傾向がありますが、仕事の多い都会では次々と職場を変えることができるので離職率が高くなっています。どちらも看護師不足の状況には変わりありませんが、地方では看護師が都会へ流れて行ってしまって絶対数が足りない状態であり、都会では転職がしやすいことから次々と職員が辞めやすいという違いがあります。
皆、関東エリアに集中する都心部に憧れる傾向がありますが、地方での看護師の求人には意外と見つかっていない狙い目案件が残っていたりします。そして、地方ごとに医療機関の傾向も違うので、自分に合った地域を探してみるといいでしょう。県ごとに求人案件をピックアップしたサイトなどもあるので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

地域によって違いはあるにしろ看護師の離職はその職場にとって大きな問題です。離職の理由に関しても表向きには「結婚や出産・家庭の事情」ということになっていますがそれも建前でしかないという意見も聞かれます。現場の看護師の話を聞いても「人間関係がいい職場は少ない」と言われることが多く、実際に職場内でいじめやパワハラを目撃した、経験したという話も多く上がっています。特に看護師の仕事はチームワークや他の職員とのコミュニケーションが大切なので人間関係が悪いことは致命的です。いろいろな個性を持った人たちが集まっている以上、一般的な職場でも人間関係の悩みはつきものですが、看護師の仕事は一人ではできない上に、そもそも多忙でストレスの多いこともあって余計に目立っているようです。仕事が忙しく人も足りない状態では誰もが常にイライラしてしまい、他の職員に当たることも多くなってしまいます。

これを改善するためにはまず、人員を増やして職員に余裕を持たせることが必要ですが、病院の運営上難しい場合も多く現状の職場内での工夫が不可欠です。看護師でも上の世代は「毎日怒られて指導された」「怒鳴られる、叩かれるは当たり前だった」といった育て方をされていて、それを自分の後輩にも行ってしまい嫌われるという悪い循環もあります。特に新しい世代はそういった旧来の「スポ魂」的指導には反発する傾向があり、新人の指導に関しても「怒らない・怒鳴らない」ことを打ち出している職場もあります。しかし、それだけで職場の人間関係が良くなるわけではないので職員がコーチングなどの手法を学び、お互いの不満をうまく引き出して改善していけるように努力している病院も出てきています。

また他にも、病院にヘルパーを入れて患者の生活介助を任せ、看護師の負担を減らす試みも行われています。患者の生活介助に関しては看護師の肉体的負担になることが多く、少しでも余裕を持たせようという方法です。職場の人間関係の問題は根深く、ある程度仕方がない部分もありますが、職員の負担を減らして離職防止につなげる努力が求められています。