良い病院

さて、ここで少し視点を変えて一般的な利用者から見た病院について考えてみます。
看護師の職場の多くは「病院」なわけですが、そこには働いている医師や看護師以外にも患者という利用者がいます。病院という所は実際はあまり積極的に行きたい場所ではありませんが、だいたい誰でもが何度かお世話になっている場所だと思います。入院などしていなくても、風邪などでたまに行くだけでその病院の雰囲気は感じることができます。いつも清潔でスタッフが明るく対応してくれる病院もあれば、設備も古くさく建物も汚れているような所もあります。中には医師や看護師の対応も素っ気なく感じが悪いと思う病院まで存在します。建物や設備もその病院の雰囲気には影響しますが、そこの「空気」と言えるようなものはそこに働いているスタッフが作り出すものです。たとえ表向きは愛想よくしていても裏で人間関係がギスギスしていたり何か問題があれば、それは自然とそこへやってくる利用者にも伝わってきます。一般の店舗でも外観や品揃えとは関係なく、何か雰囲気が悪いとかどうも中に入りづらいと感じることがありますが、それもやはり何かその職場が抱えている問題がその「空気」となっているのかもしれません。

その「空気」を悪くしているものはおそらく人間関係の問題や労働環境の悪さによるスタッフの疲弊などが主な原因でしょう。よく雑誌などで「患者が選ぶ口コミ病院ランキング」といったものが出されていることがあります。その結果を見ると、だいたいどのランキングでも上位に入ってくるのは同じ病院ばかりです。その中の一つにでも行ってみると分かりますが、院内はホテルのように明るく清潔でどのスタッフの対応も気持ちよく、その病院の評判が良い事にも納得がいきます。一般的な感覚でも「良い病院」というのは単に建物や設備が新しく整っているだけでなく、全体の雰囲気が明るくスタッフにも余裕のある感じがするものです。実際、そういった病院は看護師からの人気も高く、人手不足や職員の不満といった問題は少ないようです。

ところで、ある看護師の方が「悪い病院の見分け方」というのを教えてくれました。

・院内の雰囲気が暗い、職員の表情に精気がない
・若手職員が少ない(平均年齢が高い)
・トイレなどが汚く、嫌なにおいがしている
・しょっちゅう求人を出している

これを見ると、悪い病院では労働環境や人間関係が悪く人が居つかない状態にあるのが分かります。この項目は働く側としての意見ですが、そこに通う患者にとっても「良い病院」とは言えないでしょう。もし、行くたびに看護師が変わっていたり、院内は陰気で悪い雰囲気が漂っているような病院があったとしたら、敢えてそこを選んで行こうとは思わないでしょう。結局、看護師にとっての良い職場とは人間関係と労働環境が良好な職場であり、それは結果的に患者にとっても選んで行きたくなるような良い病院、ということではないでしょうか。