看護に必要なこと

全国的な看護師の人材不足と言われる昨今、新人看護師の技術不足もよく話題になっています。看護技術というものはそもそもちょっとやそっとで身につくものではありません。むしろ毎日の勉強と経験の積み重ねで身につけていくものなので簡単に「こうすれば身につく」といった近道はありません。例えば何かスポーツを始めるにしても「これを読んだら野球の技術が身につく」とか「これさえ知っておけば泳ぎ方が身につく」などということはないのと同じです。

どんなに優れた技術を持ったベテラン看護師でも日々の勉強は欠かしません。また、患者をよく見る観察力や素早い判断力、高いコミュニケーション能力など看護師として必要な資質を高いレベルで備えています。これは元々その人が持っていた資質とも言えますが大部分はそれまでの看護の経験で築き上げ、身につけてきた技術なのです。看護の技術には一つ一つコツや技法がありそれを覚えることも大切ですが、ただ知識を増やすだけが本当の「看護」技術の身につけ方とは言えません。むしろ看護の基礎技能である観察力や判断力、応用力をしっかりと鍛えることが看護技術を高めることにつながるのです。

また、看護師は人の命を預かる仕事なので「そうしろと言われたから」とか「いつもそうしているから」という理屈は通りません。どんなことにも「なぜそうするのか」という根拠を持たなくてはなりません。研修や実地においてもただ漫然と作業をこなしていては技術も身につきません。しっかりとした根拠を元に経験を積むことでその技術が身についてくるのです。つまるところ、看護技術を身につけるには看護師としての資質を高め、経験を積んでいくしかありません。そのためにここでは本来「看護」とは何かを考えるところからスタートし、看護師の資質を伸ばす方法を考えていきたいと思います。

そして後半では最近ニーズが高まりつつある在宅医療を話題にします。訪問看護の利用の仕方から、家庭看護において必ず必要となってくる食事、移動、排泄のケアについて具体的に触れていきます。これらは病気の家族をケアする技術ですが、同時に看護の基礎技術でもあります。こういった基礎技術であってもなぜそうするのか、という根拠を大切にしてください。看護師にとって患者は基本的に他人ですが、もし自分の家族が病気だったらと考えてケアを行うのも資質を伸ばす一つの方法です。

看護師のように看護の勉強をしてきたわけではない人にとって大切なのは正しい看護知識を身につけることです。患者の病気のことや急変時の対応などを知り、患者の状態が分かる理解力や応用力も求められます。患者の生活をただ何となく見ているだけではダメで、患者の起きてから寝るまでのリズムをつかみ、排泄の回数や時間、何をいつするかといった情報をキャッチすることが大事です。さらに、どうしたら負担が少なく看護ができるのか、どういうサービスが利用できるのかといった知識も必要です。そのためには訪問看護を利用してプロの看護師に直接教わったり、地域包括支援センターにいる保健師や看護師に相談するといった手段があります。